このコンサートは年に一度の開催ですが、19回目になりました。障がいのある子が声をあげたり動いてしまったりすることを気にせず、家族みんなで楽しく観てもらえるようにという目的で、継続してきました。
元々は、重複障がいの一人息子が幼かった頃、「音楽が大好きだけれど生の楽器の音を聞いたことがないんだよね」、と話していたら、当時の高校生の教え子たちが「僕たちがコンサート開きますよ」と言ってくれたのがきっかけです。シャイニングハーツコンサートという名前も、彼らが決めてくれました。途中からは、障がいのある子も健常な子もみんなが家族連れで楽しく観てもらえるように、という枠組みとして続けてきましたし、最近では、まだ幼い子を育てている「障がい児の親、初心者クラス」の親御さんたちの力になればなという気持ちです。
それは、私たち家族も、このコンサートの場で知った育児サークルに入ったおかげで、多くの先輩保護者と関わることができて助けられたからです。乗馬や水泳や絵画など、それまで考えたこともなかった新世界を息子に経験させることができ、それは、今も大きな支えになっています。
子どもが小さい今は、毎日の生活の中で、子の安全と無事を祈り、心配し続ける日々でしょう。例えばこの子だけの外泊なんて考えられないという方も多いと思います。うちもそうでした。でも今では、最低でも月に一回は預かってくださる事業所さんなどにお泊りさせて、旅や乗馬など夫婦だけのゆったりした時間を取ることもできるようになりました。一番大きな問題は、自分たちこそが健常人の中で育ってしまった親の常識感なのです。「この力ない、かわいそうな子」という認識をしてはいないでしょうか。
私は20年以上の我が子とのかかわりで、はっきり見えてきました。まず第一に本人は幸せに生きているということ。これは大事な事実です。そして、ひとつの重要なカギは、「こんなハンデキャップがある子に何ができるだろう」という「個人戦」の人生観を捨てることです。詳しくは、※「パートナー力」という高濱コラムを見てください。子ども個人に注目すれば、偏差値を測定することすら不能な「保護すべき人」に見えるかもしれません。しかし、「二人で一つ」、「家族で一つ」という見方をすれば、彼らは実はものすごく大きな力を発揮していることがわかります。家族に障がいの兄弟がいるから、医者や看護師や療法士などになった人が、どれだけ多いでしょうか。政治家や芸能人・経営者などで成功した方にもたくさんいます。
私自身が、まさにその力をもらった一人で、遊び人でさぼり屋で、ぎりぎりにならないと動かない、だらしない人間の典型だったのですが、息子が生まれてから、そういう弱い気持ちがなくなり、まっすぐに仕事に打ち込み続けることができました。そこで見えてきたのは、彼には「横にいる人の『心を整える力』」があるということです。
人間世界を眺めれば、例えば「やらねばならない」と分かっていながらサボってしまうとき、「やってはいけない」と承知なのに、またつい手を出してしまいやめられないとき、極端には犯罪を犯してしまうときなど、人は「心の弱さ」によって様々な失敗をします。それが「心の生き物」である人間の普通の姿です。しかし、例えば私の経験でいうと、寝顔を見てまず心が洗われ、笑顔に癒され、トントンと私の背中をタップしてくれたり、ギューっと抱きしめてくれたりすると、スーッと何とも安らかな気持ちになれるのです。しかも毎日。
そのことによって、理で詰めたやるべきことに、迷いなく打ち込むことができ、嘆くことも逃げることもなくなりました。金額やブランドやランキングや他人の成功などに惑わされず、いつでも一番大切なものを見つめて生きることができました。おかげで、仕事にも邁進できるし、ブレずに生きることができました。つまり、私をまっすぐに頑張らせてくれるのでした。
実は、0歳のとき症状名が確定した病院で、担当の小児科の先生が、笑顔で「おめでとうございます!これから素晴らしさを知りますよ」とおっしゃったのです。子どもが障がいなのに、何てことを言う人だとも思ったのですが、確信に満ちた言葉に説得力があり、良いことが起こりそうな予感もありました。今お会いしたら、「確かにそうでした先生。本当に最高の毎日を過ごすことができています」と言い切れます。
ぜひ、自分の中の常識観に囚われず、先輩の親御さんとたくさんつながって、まずは情報を収集してください。そして、我が子のおかげで家族に力がみなぎる喜びを感じながら、助け合いながら歩いていきましょう。
今回も、多くのスタッフ・ボランティアのみなさんや、無償で出演してくださるみなさまのおかげで、この日を迎えることができました。本当に、ありがとうございました!
高濱正伸
※パートナー力:高濱コラム2016年9月https://www.hanamarugroup.jp/column/2016/2497/